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事業再構築補助金の事業計画書の書き方を解説します。

事業計画書のページ数の目安

事業計画書のページ数の目安は、A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)です。図表や写真などを入れて見やすくするとともに、指定されたページ数におさまるように作成しましょう。

事業計画書に何を書くか

事業再構築補助金の事業計画書は、ざっくりいうと「現在の事業はこのような状況に置かれており、将来的にはこのような動向が予想されるため、新規事業への取り組みが必要である」ということを示すものです。

公募要領に、事業計画書の見出しが1から4まで示されていますので、順番に解説します。

  • 1:補助事業の具体的取組内容
  • 2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
  • 3:本事業で取得する主な資産
  • 4:収益計画

1:補助事業の具体的取組内容

【重要】事業計画書の1ページに必ず書くこと

事業計画書の1ページに書くことは指定されています。

※1ページ目で、製品・サービスに事業者にとっての新規性があること、及び新製品・新サービスを通して既存事業と異なる市場に進出することについて説明してください。1ページ目で「事業再構築」の定義に合致するか(前提要件を満たすか)審査を行い、合致しないと判断された場合には不採択となります。

事業再構築補助金【サプライチェーン強靱化枠を除く】公募要領(第10回)

1ページ目で「事業再構築」の定義に合致するか(前提要件を満たすか)を審査し、合致しないと判断された場合には不採択となるとあり、大変重要です。

記載内容は、事務局HPで参考様式(事業計画書表紙)が公表されています。参考様式では、上部に「事業者名」、「事業計画名」、「申請枠」、「事業再構築の類型」を、表に「製品・サービス」と「市場・顧客」のそれぞれについて、既存事業と新規事業がどのように異なるのかを記入します。

記入にあたっては、必ず事業再構築指針と事業再構築指針の手引きを確認しましょう。

事業計画書表紙

参考様式2ページ目には、事業再構築の類型ごとの要件が記載されています。

事業再構築の類型必要となる要件
新市場進出①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③新事業売上高10%等要件
事業転換①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③売上高構成比要件
業種転換①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件、③売上高構成比要件
事業再編①組織再編要件、②その他の事業再構築要件
事業計画書表紙2ページ目より
要件名申請にあたって示す内容
製品等(製品・商品等)の新規性要件①過去に製造等した実績がないこと、②定量的に性能又は効能が異なること
市場の新規性要件既存事業と新規事業の顧客層が異なること
新事業売上高10%等要件新たな製品等の(又は製造方法等の)売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となること
売上高構成比要件新たな製品等の属する事業(又は業種)が売上高構成比の最も高い事業(又は業種)となること
組織再編要件「合併」、「会社分割」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」等を行うこと
その他の事業再構築要件「新市場進出(新分野展開、業種転換)」、「事業転換」又は「業種転換」のいずれかを行うこと
事業計画書表紙2ページ目より

事業転換と業種転換は必要となる要件が同じように見えますが、売上高構成費要件に違いがあります。事業転換の売上高構成比要件は、主要な業種が細から中分類レベルで変わること、業種転換の売上高構成比要件は、主要な業種が大分類レベルで変わることです。業種は日本標準産業分類に基づきます。

事業再構築補助金第10回公募要領P.18

1ページ目の記載例

製造業で「事業転換」の要件を満たす事例をみてみましょう。

【事例】プレス加工用金型を製造している下請事業者が、業績不振を打破するため、これまで培った金属加工技術を用いて、新たに産業用ロボット製造業を開始し、5年間の事業計画期間終了時点において、産業用ロボット製造業の売上高構成比が、日本標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合

「事業転換」の「要件を満たす考え方」は以下のとおりです。

事業再構築指針の手引き(3.0版)

上表の内容を事業計画書表紙にプロットしました。各事業類型の「要件を満たす考え方」は事業再構築指針の手引きに載っていますので、それらを踏まえて具体的に記載しましょう。

2ページ目以降に書くこと

1ページ目に事業再構築の定義に合致することを示した後は、2ページ目以降に補助事業の具体的取組内容について、その詳細を記します。

公募要領には審査項目が「審査項目」の表にまとまっており、事業計画の内容が審査項目の内容に沿ったものであるほど、採択に有利になります。

(参考)事業再構築補助金公募要領(第10回)P.45 表1「審査項目・加点項目」

このように、公募要領には細かく審査項目が示されており、審査項目を多く明記した事業計画は高い評価を得ることができます。

以上のように、事業計画の中で審査項目を満たすことをどのように明記するかがポイントになりますので、ここからは、公募要領の事業計画書に記載する内容を追いながら、各見出しで審査項目に触れられるかを説明していきます。審査項目について記載できそうな箇所に【事業化点①】、【再構築点①】等のマークを付けましたので、参考になればと思います。

見出しの一覧は以下の通りです。

・ 現在の事業の状況
・ 強み・弱み、機会、脅威(SWOT分析)
・ 事業環境
・ 事業再構築の必要性
・ 事業再構築の具体的内容
・ 補助事業のスケジュール
・ 補助事業を行うことによって、どのように他者、既存事業と差別化し競争力強化が実現するか

それでは上から順にみていきましょう。

現在の事業の状況

会社概要や事業内容です。会社概要には、設立年や代表者の経歴、従業員数、店舗、工場、直近の売上高、企業目的、理念などの会社のプロフィールを記載します。事業内容には、どのような製品・サービスをどのような顧客向けに製造・販売しているのか等、事業のおおまかなイメージを記載します。

強み・弱み、機会、脅威(SWOT分析)

自社の強み、弱み、機会、脅威を分析(SWOT 分析)した上で、事業再構築の必要性を記載します。

SWOT分析は、企業や事業の現状を把握するのに有効なフレームワークです。解決したい目標に対して、内部環境や外部環境におけるプラス要因、マイナス要因を抽出します。さらに、クロスSWOT分析を用いて、強み、弱み、機会、脅威の4項目を掛け合わせることで、選択すべき戦略を明確にしていくこともできます。

SWOT分析を行うことで、現状の問題点(課題)や現状を変える方法、将来にわたって行う可能性のある状況を明確にすることができますので、分析を経て複数の選択肢の中から検討し、最適なものが選択されたことを示すことができるとよいでしょう。【再構築点①】

マンガでわかる「SWOT分析」,ミラサポplus

事業環境

SWOT分析を行うにあたり、自ずと事業環境を調査することとなります。事業環境とは、事業を取り巻く外部環境をあらわします。市場規模や市場動向、顧客ニーズの変化、政策の転換、新技術による産業構造の変化、新型コロナウイルスの影響による社会情勢の変化等です。統計データや研究機関の調査資料等、客観的な根拠を示すのがポイントです。

新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となる場合は、その旨を記載しましょう。【政策点③】

事業再構築の必要性

上述したSWOT分析、事業環境の内容が、事業再構築の必要性を裏付けるものになっていることを確認しましょう。

事業再構築の具体的内容

ここからは補助事業の概要と具体的な内容(既存事業との違い(特に顧客の違い)、提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)を説明します。

補助事業を行うためにシステムを構築するのであれば、どのような機能をもったシステムなのかをイメージできるように、画面イメージやシステム構成図等を用いて説明します。設備を導入するのであれば製品パンフレットを参考にするとよいでしょう。設備の機能やメリット、設備の導入によりどのような課題が解決されるか等、その設備を選定した理由を記載します。

事業再構築指針に基づいた取り組みであることは大前提ですが、事業再構築補助金においては、 業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築を行う計画の方が採択に有利です。【再構築点②】

補助事業のスケジュール

事業実施期間内に投資する建物の建設・改修等の予定、機械装置等の型番、取得時期や技術の導入や専門家の助言、研修等の時期を記載します。事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールが明確かつ妥当であることを示しましょう。【事業化点③】

補助事業の開始は交付決定後となりますが、公募締切から採択発表までは2か月強、交付申請から交付決定までは1か月程度はかかります。なお、工事の工程表などは元のデータ大きく、A4に縮小すると見づらくなることがありますので、その際は記載方法を変更するなどして調整します。

補助事業を行うことによって、どのように他者、既存事業と差別化し競争力強化が実現するか

補助事業における同業他社との差別化の方法や仕組み、実施体制を記載します。実施体制は、プロジェクト責任者、営業責任者等の氏名や委託先業者名を記載した体制図を入れるとわかりやすいです。

また、下記の審査項目を満たす場合は、必ず記載することをおすすめします。

  • ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっていること。特に、価格・性能面での競争を回避し継続的に売上・利益が確保できるような差別化戦略が構築できていること。【事業化点②】

差別化戦略の例

  • オープン/クローズ戦略等を通じた知財化戦略
  • 標準化戦略による参入障壁の構築
  • 研究開発やブランディング・標準化を通じた高い付加価値・独自性の創出
  • サプライチェーンや商流の上流・下流部分を自社で構築するなど他社が模倣困難なビジネスモデルの構築
  • 競合が少ない市場を狙うニッチ戦略 等
  • 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いこと。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっていること。【再構築点③】
  • 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業であること。【再構築点④】
  • 新たに取り組む事業の内容が、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業になっていること。【再構築点⑤】

2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)

具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法

補助事業のユーザー、マーケット、市場規模、優位性・収益性、課題やリスクとその解決方法について、加点項目を意識しながら書くと良いでしょう。

  • 補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確であること【事業化点①】
  • 市場ニーズの有無を検証できていること【事業化点①】
  • ターゲットとするマーケットにおける競合他社の状況を把握し、競合他社の製品・サービスを分析し、自社の優位性が確保できる計画となっていること【事業化点②】
    特に、価格・性能面での競争を回避し継続的に売上・利益が確保できるような差別化戦略が構築できていること
  • 事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証していること【事業化点③】
  • 事業化に至るまでの遂行方法、課題の解決方法が明確かつ妥当であること【事業化点③】
目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等

新たな製品・サービスの価格と、補助事業終了年度から3~5年後までの販売数量等の目標を記載します。

補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いこと、そして、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっていることを記載できるといいでしょう。【再構築点③】

3:本事業で取得する主な資産

補助事業(本事業)で取得する単価50万円以上の建物、機械装置・システム等について、名称、日本標準商品分類、取得予定価格、建設・設置場所を記載します。応募の段階では見積書を添付するわけではありませんが、見積書を取得したうえで正確な金額を記載することをおすすめします。

4:収益計画

補助事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画における「付加価値額」や「給与支給総額」の算出根拠を示します。収益計画は、必ず補助対象要件を満たす数値で作成します。事業計画書上の収益計画のフォーマットは決まっていませんが、電子申請時に収益計画を入力する欄がありますので、それと同じ項目で作成しておくと便利です。電子申請入力項目は事務局HPからダウンロードできます。

審査項目を念頭に、補助事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できること。また、自己資金が不足する場合は、金融機関等から十分な資金の調達が見込めることを示せるといいですね。【事業化点④】

補助対象要件

  1. 経 済 産 業 省 が 示 す 事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。
  2. 補助事業終了後3~5年で付加価値額を年率平均3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上増加させること。又は従業員一人当たり付加価値額を年率平均3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上増加させること。

審査項目「政策点」について

審査項目には事業化点、再構築点のほかに、政策点があります。項目を多く満たすほど採択に近づきますので、補助事業が政策点を満たす場合は、事業計画書に記載することをおすすめします。

「政策点」の内訳

  1. ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。
  2. 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
  3. 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。
  4. ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
  5. 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。※地域未来牽引企業地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画に選定されている企業や承認を受けた計画がある企業は審査で考慮いたします。
  6. 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。

最後に

事業計画書というと漠然としていますが、事業再構築補助金の公募要領に沿うと、記載すべき項目は細かく示されていることがわかると思います。審査項目・加点項目は採択に大きく影響するとともに、新事業の競争力強化にも有効な内容となっていますので、それらを念頭に置いた新事業を検討されてはいかがでしょうか。