ものづくり補助金とは、中小企業が生産性を向上させるための設備投資にかかる費用を補助する制度です。この記事ではものづくり補助金の概要や採択率を上げるポイントをわかりやすく解説します。
- 1. ものづくり補助金とは設備投資を支援する補助金
- 2. 2023年ものづくり補助金の現在募集中の申請回
- 3. 2023年ものづくり補助金の公募要領と申請条件
- 3.1. 補助条件
- 3.2. 補助対象者
- 4. ものづくり補助金の申請枠と補助率
- 4.1. 通常枠
- 4.2. 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- 4.3. デジタル枠
- 4.4. グリーン枠
- 4.5. グローバル市場開拓枠
- 4.6. 大幅賃上げに係る補助上限引上の特例
- 5. 2023年ものづくり補助金のスケジュール
- 6. ものづくり補助金の申請には、GビズIDプライムを用意
- 7. ものづくり補助金の申請に必要な書類
- 8. ものづくり補助金で採択を受けるためのポイント
- 8.1. 基本要件を満たす事業計画書を作成する
- 8.2. 審査項目をおさえた事業計画書を作成する
- 8.3. 加点項目を満たして申請する
- 8.4. 事業計画の実現可能性を示す客観的なデータを記載する
- 8.5. 見た目にわかりやすく仕上げる
- 9. ものづくり補助金の申請は専門家のサポートを受けることをおすすめ
ものづくり補助金とは設備投資を支援する補助金
ものづくり補助金は、新しい商品を製造するために設備を購入をしたり、新しいサービスを展開するためにシステムを開発したりする際に活用することができます。また、新しい設備やシステムを導入することが生産プロセスやサービスの提供方法の改善につながる場合も対象となります。
2023年ものづくり補助金の現在募集中の申請回
現在のものづくり補助金は令和2年(2020年)からスタートし、応募締切が3ヶ月に一回、応募締切が一年度に4回のサイクルで実施されてきました。現在募集中の申請回は16次です。
16次の応募締切:2023年11月7日(火)17時
2023年ものづくり補助金の公募要領と申請条件
ものづくり補助金の公募要領は、申請回ごとにものづくり補助事業公式ホームページに掲載されます。公募要領には、申請の対象者や補助金額、申請方法等のルールが詳しく記されています。
補助条件
ものづくり補助金の応募条件は、中小企業が革新的な「新製品・サービスを開発」もしくは「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備投資をすることです。基本は「通常枠」ですが、追加要件を満たす場合は他の申請枠での応募が可能です。
補助対象者
ものづくり補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主を対象としています。中小企業の定義は中小企業等経営強化法にもとづき、資本金又は常勤従業員数が下表の数字以下となる会社又は個人が対象です。
業種 | 下記のいずれかを満たす | 小規模事業者 | |
---|---|---|---|
資本金 | 従業員数 | ||
製造業、建設業、運輸業、その他 | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
ものづくり補助金の申請枠と補助率
2023年ものづくり補助金の申請枠は、通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠、グローバル市場開拓枠の5つがあります。
基本は通常枠です。他の申請枠の要件を満たす場合は、補助率や補助上限の優遇を受けられます。まずは簡単に申請枠ごとの特徴を説明します。(申請枠名をクリックすると該当欄にジャンプします。)
- 新しい設備やシステムを導入することで、革新的な新製品の開発、新サービスの開発、機械化による生産プロセスの改善やサービスの提供方法を改善する → 【通常枠】
通常枠の要件に加えて、下記の条件にあてはまる場合は該当の申請枠を選択可能です。
- 前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下の事業者が実施する場合 → 【回復型賃上げ・雇用拡大枠】
- DXを推進する製品・サービスの開発、AI・IoT等のデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善等 → 【デジタル枠】
- 温室効果ガスの排出削減に寄与する設備投資 → 【グリーン枠】
- 海外事業の拡大・強化、海外市場開拓、インバウンド市場開拓を目的とする設備投資 → 【グローバル市場開拓枠】
- 大幅賃上げを実施する → 【大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例】
申請枠ごとの補助率・補助金額は下記のとおりです。
通常枠
ものづくり補助金の基本の申請枠です。
・補助金額
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円 ~ 750万円 |
6人~20人 | 100万円 ~ 1,000万円 |
21人以上 | 100万円 ~ 1,250万円 |
・補助率
1/2(小規模事業者は2/3)
回復型賃上げ・雇用拡大枠
前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下の事業者であり、常勤の従業員がいる場合に選択できます。賃上げが必須で、補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額の増加率が1.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準の増加目標を達成することが条件となっています。
通常枠の補助率1/2に対して、回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助率は2/3と高いです。
・補助金額
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円 ~ 750万円 |
6人~20人 | 100万円 ~ 1,000万円 |
21人以上 | 100万円 ~ 1,250万円 |
・補助率
2/3
回復型賃上げ・雇用拡大枠は賃上げ目標を達成しなかった場合、補助金交付額全額の返還が求めることにご注意ください
デジタル枠
デジタル枠は、DXを推進する革新的な製品・サービスの開発やデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善が該当します。通常枠の補助率1/2に対して、デジタル枠の補助率は2/3と高いです。
デジタル枠の活用例
デジタル枠の活用例は下記のとおりです。
①DXを推進する製品・サービスの開発
AI・IoT、センサー等を活用した遠隔操作や自動制御、プロセス可視化等の機能を持つ製品・サービス・ソフトウェア等の開発
②デジタル技術による生産プロセス・サービス提供方法の改善
AIやロボットシステムの導入によるプロセス改善、複数の拠点にサービスを提供するオペレーションセンターの設置
・補助金額
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円 ~ 750万円 |
6人~20人 | 100万円 ~ 1,000万円 |
21人以上 | 100万円 ~ 1,250万円 |
・補助率
2/3
グリーン枠
グリーン枠は、省エネ・環境性能に優れた製品・サービスの開発や脱炭素化に寄与する生産プロセス・サービス提供の方法の改善等が該当します。エントリー類型、スタンダード類型、アドバンス類型の3つに分かれており、アドバンス類型では最大4,000万円まで補助されます。
・補助金額(エントリー類型)
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 100万円 ~ 750万円 |
6人~20人 | 100万円 ~ 1,000万円 |
21人以上 | 100万円 ~ 1,250万円 |
・補助率
2/3
グローバル市場開拓枠
グローバル市場開拓枠は、海外事業の拡大・強化等を目的とした「製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等に活用できます。
・補助金額
100万円 ~ 3,000万円
・補助率
1/2(小規模事業者は2/3)
大幅賃上げに係る補助上限引上の特例
各申請枠の補助上限に達した場合、大幅な賃上げに取り組むことで補助金額を引き上げることができます。この特例は、回復型賃上げ・雇用拡大枠、再生事業者、常勤従業員がいない事業者は、選択できません。
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
5人以下 | 最大100万円引上げ |
6人~20人 | 最大250万円引上げ |
21人以上 | 最大1,000万円引上げ |
補助上限引上の特例を使うには、下記3つの条件を満たす必要があります。
- 事業計画期間において、基本要件である給与支給総額を年率平均1.5%以上増加に加え、更に年率平均4.5%以上(合計で年率平均6%以上)増加とすること
- 事業計画期間において、基本要件である地域別最低賃金+30円以上の水準とすることに加え、事業場内最低賃金を毎年、年額+45円以上増額すること
- 応募時に、上記2点の大幅な賃上げを達成するための具体的かつ詳細な事業計画を提出すること
未達の場合は、補助金額の引上げを受けた分(差額)の返還を求められる点にご注意ください
2023年ものづくり補助金のスケジュール
ものづくり補助金は年間を通して公募を行っており、令和3年、令和4年は年4回実施されました。2023年度も下表のとおり、約3ヶ月に1回実施されています。応募締切から採択発表まで約2ヵ月です。
申請回 | 応募締切 | 採択発表 |
---|---|---|
14次 | 4月19日 | 6月23日 |
15次 | 7月28日 | 9月下旬予定 |
16次 | 11月7日 | 1月中旬予定 |
16次のスケジュールは下記のとおりです。
(出典:ものづくり補助事業公式ホームページ)
ものづくり補助金の申請には、GビズIDプライムを用意
ものづくり補助金の申請には、GビズIDプライムアカウントが必要です。GビズIDプライムアカウントとは、法人や個人事業主が行政とやりとりするためのアカウントです。アカウントを発行するには、印鑑証明書と登録印鑑を押した書類を運用センターに郵送します。発行までに2,3週間かかるため、早めに申し込みましょう。
詳しくはgBizID公式サイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)
ものづくり補助金の申請に必要な書類
ものづくり補助金の申請には事業計画書や決算書等をはじめとして、様々な書類を提出します。直近2年間分の決算書に加え、通常枠ではA4サイズ10ページ以内の事業計画書、補助対象経費に関する誓約書、賃上げ誓約書が必要です。その他、申請枠等に応じて添付書類が変わります。加点項目についても添付書類で証明しますので、提出形式を確認して添付しましょう。
法人が提出する決算書類
- 直近2年間の決算書(賃借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表)
※設立2年に満たない場合は、1期分の決算書を添付
※設立まもなく決算書の添付ができない場合は、事業計画書及び収支予算書を添付 - 法人事業概況説明書
- 受信通知(e-TAXの場合)
個人事業主が提出する決算書類
- 直近2年間の確定申告書一式
- 所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書
- 受信通知(e-TAXの場合)
ものづくり補助金で採択を受けるためのポイント
基本要件を満たす事業計画書を作成する
ものづくり補助金は、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること、事業場内最低賃金が毎年、地域別最低賃金を30円以上上回ること、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上とすることが基本要件に定められています。これは基本要件のため、これを満たす計画でないと採択されません。
審査項目をおさえた事業計画書を作成する
採択に近づくために、審査項目をおさえることも重要です。審査項目は公募要領に記載されていますので、確認の上、審査項目を満たすことをわかりやすく記載しましょう。
例えば、技術面の審査項目である「新製品・新サービスが革新的な開発となっていること」は、業界や他社の動向を述べ、それと比較することで新製品・新サービスが革新的なものであることを示せます。なお、重要な部分は下線や太字を用いて強調するなど見た目も工夫します。
加点項目を満たして申請する
加点項目を満たすと審査時に加点されるため、採択率が高まります。経営革新計画の承認を取得していると加点されますが、経営革新計画も作成および申請に相当の時間と労力がかかるため、まずは加点なしで申請してみるとよいでしょう。
一方、事業継続力強化計画は比較的取り組みやすくおすすめです。 通常枠以外の申請枠は独自の加点項目もありますので、早めに公募要領を確認して準備していきましょう。
事業計画の実現可能性を示す客観的なデータを記載する
市場規模や今後の見通しについては客観的な根拠として公的機関等の統計資料を引用することで、客観的に見て説得力のある事業計画とすることができます。サービスやシステム開発の背景として顧客や利用者の声を集め、掲載することも有効です。既存事業が新商品やサービスの販路拡大に役立てられる場合はその点を述べることもできます。
見た目にわかりやすく仕上げる
事業計画書は文書ですが、図表や画像を自由に配置できますので、文字と画像をうまく組み合わせて視覚的にわかりやすく仕上げましょう。たとえ記載していても、伝わりにくかったり見にくかったりすると審査時に見落とされてしまいます。
専門用語には注釈をつける、一般的な平易な言葉に置き換えるなどして、専門知識を持たない人でも理解できる内容にしましょう。
ものづくり補助金の申請は専門家のサポートを受けることをおすすめ
ものづくり補助金は中小企業が、生産性を向上させるための設備投資にかかる費用を補助する制度です。公募要領に必要なことはすべて書かれているとはいえ、内容が膨大であるため、本業を行いながらものづくり補助金の申請を行うことは申請者にとってかなりの負担だと思います。
当社はシステムコンサルタントが在籍しているため、機械設備の購入に比べると説明が難しいとされるフルスクラッチ開発案件も多数の採択実績があります。申請可否の無料診断を行っていますので、設備投資を検討の際はお気軽にご相談ください。
(参考:ものづくり補助事業公式ホームページ)