補助金|ブログ

ものづくり補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主が、働き方改革や被用者保険の拡大、賃上げ、インボイス導入等の制度変更に対応できるよう、生産性を向上させるための設備投資にかかる費用を補助する制度です。この記事ではものづくり補助金採択後の手続きのポイントを解説します。

ものづくり補助金採択後の全体の流れ

ものづくり補助金採択後の全体の流れは以下のとおりです。採択後まず行うのは交付申請です。交付申請は、見積りを提出して補助金額を確定させる手続きです。交付決定から実績報告までは10か月間の期限が設けられています。期間内に終わらないと補助の対象外となりますので、全体スケジュールに注意しましょう。

ものづくり補助金全体のスケジュール

(出典:ものづくり補助金事務局 採択事業者向け手続き説明動画―交付申請編―)

ものづくり補助金採択後の手続き

補助金交付申請書の作成・提出

ものづくり補助金総合サイト補助事業の手引き入力ガイドをもとに交付申請を行います。見積書を用意する際の主な注意点は以下です。

  • すべての経費について、見積書・相見積書を用意する(社判、税抜き価格の表示が必須)
  • 単価50万円(税抜き)以上の物件を発注する場合は2社以上の相見積書を用意する
  • 見積書と相見積書は同一条件で取得する(明細をそろえる)
  • 「〇〇一式」等の表記は認められないため、内訳を明らかにする
  • 見積書に有効期限がある場合は、交付申請日、できれば交付決定後の注文日にも有効な見積書を用意する
    ※有効期限まで3ヶ月ほどあると安心
  • 独占販売等でどうしても相見積書が用意できない場合は、「業者選定理由書」を用意する
STEP
1

交付決定通知の受領

交付申請が完了すると、交付決定通知が届きます。

交付決定前に発注、購入、契約した経費は補助対象外ですので、必ず、交付決定が下りてから発注しましょう

STEP
2

新事業(補助事業)の実行

交付申請時に完了していればスキップ
  1. 見積依頼書
    「見積依頼書」を作成します。実際に発注先に渡さなくてもかまいませんので、参考様式をもとに作成しておきましょう。
  2. 見積
    交付申請時に取得した見積書について、納期と有効期限を確認します。発注時点で有効な見積書が必要です。
    発注日に有効期限が切れてしまう場合は、再度取り直してください。事業完了期限を見据えてスケジュールを確認しましょう。
交付決定後
  1. 発注
    「注文書」(控)と受注書等の「注文請書」を保管します。契約書や注文書(控)、受注書を必ず受領、保管してください。
  2. 納品
    「納品書」「配送伝票」を保管します。メーカーの担当者が直接搬入する場合は「配送伝票」はなくてもかまいません。
  3. 検収
    取得年月日=検収年月日です。納品日ではありません。検収年月日の確認が必須ですので、手書きでいいので、納品書に「検収年月日」、「検収者の氏名」、「『検収』の文字」を記入しておきます。注意事項にイメージを掲載しています。
  4. 請求
    納品後は「請求書」が発行されますので、保管します。
  5. 振込
    支払は原則、銀行振込のみです。金融機関から受け取る「振込受付書」を保管します。インターネットバンキングの振込完了画面の写しも有効です。金融機関によっては一定期間を過ぎると取得できなくなりますので、振込の際に必ず取得しておきましょう。なお、振込は事業完了期限内に完了する必要があります。先方への着金をもって振込完了ですので、余裕をもって振り込んでください。
  6. 新事業(補助事業)の完了
    事業完了期限は交付決定後10か月以内です。ただし、回ごとに最終締切日が設定されており、最終締切日が到来すると、交付決定後10か月以内であっても終了します。事業完了期限後に支出した経費は補助対象外ですので、注意します。
STEP
3

提出書類の作成・提出

  1. 「補助事業遂行状況報告書」の作成と提出
    「補助事業遂行状況報告書」を作成し、事業の進捗状況を報告します。提出時期は事務局から指示があります。遂行状況報告書とは別に、経費の支出状況について確認が入ることがあります。
  2. 中間監査
    機械装置等の納入後に、必要に応じて事務局担当者が事業実施場所を訪問し、進捗状況を確認します。
  3. 実績報告書の作成・提出
    「実績報告書」および関連書類をまとめて提出します。提出期限は、補助事業完了から30日以内、または最終締切日のいずれか早い日です。スムーズに実績報告できるよう、事業実施中から書類関係を整理しておきましょう。
  4. 確定検査(交付額の決定)
    「実績報告書」の内容に基づき、必要に応じて事務局担当者が事業実施場所を訪問し、実施状況を確認します。
  5. 補助金確定通知書の受領
    補助金額が確定し、「補助金確定通知書」が届きます。
STEP
4

補助金の受給

  1. 補助金精算払の請求
    「補助金確定通知書」が届いたら、それをもとに補助金の請求を行います。実績報告書提出期限から3か月以内に完了する必要があります。
  2. 補助金の受給
STEP
5

事業化状況・賃上げ状況の確認(毎年4月)

補助金全額の交付を受けた日以降、最初に迎える4月1日から60日以内の日を初回として、5年間(合計6回)、前回報告以降(初回の場合は交付決定日以降)の補助事業の成果の事業化状況、給与支給総額、賃上げ状況、付加価値額等をシステムを通して報告します。

STEP
6

新事業実施中の注意事項

新事業(補助事業)実施中、特に注意する点を列挙します。

経費関係書類は物件ごとに必ず原本を整理・保管すること

監査の際に確認がありますので、書類の管理は厳密に行ってください。伝票類は、補助事業に関するものだけをまとめ、機械装置・システム構築費等の種別(費目別)・物件別に時系列に整理・保管します。

例えば、機械装置を1台導入した場合、機械本体の型番プレートの下などに「R1もの補助 機‐1」とラベルを貼り付けます。「機‐1」の部分は「費目別支出明細書」に記載する管理No.となります。

機械装置、原材料などに管理No.を記載したラベルを貼付します

(出典:ものづくり補助金事務局 実績報告資料等作成マニュアル令和4年9月版 
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/1st/hojo/hojo_jisseki_manual_20220915.pdf)

そして、機械装置関連の経理書類に「【R1で始まる受付番号】事業者名_機‐1_見積依頼書」のようなファイル名を付けます。機械装置の経理書類を時系列に一枚のPDFにまとめ、ファイル名の末尾を「経理書類一式」としても問題ありません。

細かい点は実績報告時に整備するとしても、費目別のフォルダをあらかじめ作成し、取得の都度まとめておくとよいでしょう。

購入する機械装置が1種類で、経理書類等ごとにファイルを作成する場合の例です

(出典:ものづくり補助金事務局 実績報告資料等作成マニュアル令和4年9月版)

検収日を記入しておくこと

納品の際は、納品書に「検収年月日」「検収者の氏名」「『検収』の文字」を記入しておきます。忘れがちなので注意しましょう。

検収のイメージ

(出典:ものづくり補助金事務局 実績報告資料等作成マニュアル令和4年9月)

機械装置の設置では設置前も含めて3種類の写真を保管すること

機械装置の設置をする場合は、設置前、設置中、設置後の3種類の写真が必要です。

  • 設置前
    何もない状態で撮影します。既存の物を撤去してから設置する場合は、撤去後に撮影します。設置後には撮影できなくなりますので要注意です。
  • 設置中
    納品の際、業者が運び入れている様子を撮影します。これも納品の時しか撮影できませんので気を付けてください。
  • 設置後
    設置後の写真を撮ります。
導入した機械装置、システム等は補助金申請事業以外に使用しないこと

目的外利用が禁じられており、発覚すると補助金の返還や罰則を受けることがあります。補助金を受けて導入した機械装置やシステム等は事業計画に記載した事業専用としてください。

補助金関連の証拠書類は交付年度終了後5年間保管すること

補助金関連の証拠書類は5年間の保存義務があるので、必ず原本を保管しておきます。経理書類の保管はもちろんですが、下記の書類は整理・保管の順序が示されているので、そちらに則って保管します。早い段階で専用のファイルを用意し、順にファイリングしておくことをおすすめします。

整理・保管すべき手続き書類

下記の順序で整理・保管すること

  1. 補助事業の事業計画書(控)
  2. 補助金交付決定通知書 ※Jグランツ
  3. 補助事業遂行状況報告書(控)
  4. 補助事業計画変更承認申請書(控)
    ※計画変更時のみ
  5. 補助事業計画変更承認通知書
    ※計画変更時のみ
  6. 補助金概算払請求書(控)
    ※該当する場合のみ
  7. 補助事業実績報告書(控)
  8. 補助金確定通知書 ※Jグランツ
  9. 補助事業精算払請求書 ※Jグランツ

(参考:ものづくり補助金事務局 【補助事業の手引き】14次締切 P.16)

計画変更時は必ず事務局担当者に連絡すること

交付申請が完了すると、事務局から担当者が一人選任されます。下記の場合は事前に事務局の承認が必要ですので、まずは担当者に相談するようにしましょう。

  • 購入する機械装置、設置場所、保管場所、経費配分等に変更が生じる場合
  • 事業を中断する場合
  • 事業を他の企業に承継する場合
補助金返還要件に注意すること

ものづくり補助金に共通して、給与支給総額の増加目標、事業場内最低賃金の増加目標が定められています。

  • 給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加目標を達成できていない場合は、導入した設備等の簿価または時価のいずれか低い方の額のうち、補助金額に対応する分(残存簿価等×補助金額/実際の購入金額)の返還を求められます。
  • 毎年3月分の賃金台帳において、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円を達成できていない場合、補助金額を事業計画年数で除した額の返還を求められます。地域別最低賃金は毎年10月に改定されます。

「回復型賃上げ・雇用拡大枠」や「大幅賃上げに係る補助上限額引上げ」については、優遇されている分、別途返還規程がありますので必ず確認しておきましょう。

補助金申請用の専用通帳を用意すること(任意)

必須ではありませんが、普段の取引と混ざらないように補助金申請用の口座を用意すると、管理や監査時の対応がスムーズです。新規に作らなくても休眠口座や動きの少ない口座など、できれば普段は使わない口座を使いましょう。

実績報告を見据えた準備を

本記事では交付申請や実績報告でつまずくポイントを中心に解説しました。実績報告時点ですべてを整理しようとすると負担が大きいうえ、設置前の写真など、事業完了後には用意できない報告資料もありますので、交付申請の準備段階から全体のスケジュールや実績報告マニュアルに目をとおしておきましょう。