補助金|ブログ

ものづくり補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主を対象に、生産性を向上させるための設備投資にかかる費用を補助する制度です。本記事は、ものづくり補助金の通常枠で使える加点項目について解説します。

ものづくり補助金の加点項目とは

ものづくり補助金は、中小企業や個人事業主が設備投資により新サービスを作ったり、業務プロセスを改善したりすることで生産性を向上させる場合に、その経費の2分の1から3分の2が交付される制度です。ものづくり補助金の交付を受けるためには、事業計画書を添付して申請し、審査を経て採択される必要があります。

ものづくり補助金の審査がどのように行われるかが肝となりますが、審査は「審査項目」と「加点項目」の2つの観点で行われます。おおまかなイメージとして、「審査項目」は事業計画書そのものの内容についての採点ポイント、「加点項目」は申請者の属性に応じて加点されるポイント、と捉えていただければと思います。

例えば、加点項目の一つに、申請者が創業5年以内の法人もしくは個人事業主であること、という項目があります。創業5年以内であるだけで加点項目を1つ満たすことができる、ということになります。

ものづくり補助金の採択率

細かい加点項目の話をする前に、ものづくり補助金の採択率をみてみましょう。

ものづくり補助金の採択率は下図のように推移しています。赤の折れ線グラフが採択率を表しており、2023年以降に締切のあった14次以降は5割ほどの採択率で推移しています。16次締切は2023年11月7日に締め切られます。

ものづくり補助金申請件数の推移

(出典:ものづくり補助金総合サイト

上図の棒グラフは、緑の特別枠と青の通常枠に分けられています。

ものづくり補助金には申請枠が設けられており、もっともベーシックな申請枠が「通常枠」です。通常枠の条件を満たした上で、追加の特殊な条件を満たした場合に「特別枠」での申請が可能となります。

通常枠に比べて特別枠の申請件数が少ないのは、特別枠のほうが応募者の要件が厳しくなることで該当する申請者が絞り込まれるからです。特別枠の内訳は、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠、グローバル市場開拓枠です。

次に、申請枠ごとの採択率をみておきましょう。

ものづくり補助金(15次締切)の申請枠ごとの採択率

2023年7月28日に締め切られた15次締切の応募数は5,694、採択数は2,861でした。応募総数5,694件のうち通常枠は3,872件ともっとも多く、全体の7割近くを占めます。

15次締切の申請枠ごとの採択率を算出したところ、デジタル枠の採択率が55.4%と多少高めではありましたが、グリーン枠やグローバル市場枠の採択率は3~4割にとどまっており、特別枠での申請が特別有利な結果とはなりませんでした。

総計通常枠回復型賃上げ・
雇用拡大枠
デジタル枠グリーン枠グローバル市場枠
申請者数5,6943,8722361,211155220
採択者数2,8611,9361176726274
採択率50.2%50.0%49.5%55.4%40.0%33.6%
ものづくり補助金15次締切の採択率

ものづくり補助金の加点項目数ごとの採択率

一方、加点項目数は採択率に大きな影響が出ており、加点項目を多く取るほど採択率が上がる結果となっています。

最新回(15次締切)の採択率は、加点0個は34.4%、加点1個は43%、加点2個は54.9%、加点3個は66.1%、加点4個は68.3%、加点5個は54.4%、加点6個以上は74.3%であり、加点5個を除き加点項目の数と採択率には正の相関がみられます。加点項目を多くとるほど採択されやすくなることが一目瞭然です。なお、通常枠では最大6個の加点が可能です。

ものづくり補助金の採択率

(出典:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金においては、加点項目を多くとることが採択率に直結することがわかりました。ここからは、取り組みやすい加点項目のおすすめ3選をご紹介します。

おすすめNo.1 事業継続力強化計画の認定を受ける

事業継続力強化計画とは、地震や洪水、感染症、サイバー関連のリスクを想定し、それぞれの対策をまとめるものです。自然災害の場合の記載例は下図のとおりです。

事業継続力強化計画で加点を受けるためには、ものづくり補助金の申請時に事業継続力強化計画認定書を添付します。事業継続力強化計画は電子申請システムから申請できますが、申請だけでなく、認定が完了している必要がありますのでご注意ください。

事業継続力強化計画は、ものづくり補助金の他にも事業再構築補助金やIT補助金等の加点項目としても挙げられています。各種補助金の締切日が近づくと認定までに時間がかかることがありますので、応募締切日の1ヶ月前くらいには申請するつもりで、早めに取り組んでおきましょう。

事業継続力強化計画の記載例

(出典:中小企業庁 事業継続力強化計画ページ 事業継続力強化計画策定の手引きより一部抜粋)

おすすめNo.2 パートナーシップ構築宣言を公表する

ものづくり補助金の応募締切日前日時点で、「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト(https://www.biz-partnership.jp/index.html)において宣言を公表している事業者が対象となります。企業の大小問わず宣言できるため、業種や規模を問わず取り組みやすい項目です。

パートナーシップ構築宣言も公表までに所定の時間がかかるようです。2023年10月19日に下記のお知らせが出ています。ものづくり補助金の16次締切(11月7日17時まで)に応募する方は、10月27日(金)17時までにパートナーシップ構築宣言を登録申請してください。


「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金〔一般型・グローバル展開型〕」(16次締切分)を申請される事業者で、「パートナーシップ構築宣言」の公開を希望される方は10月27日(金)17時までに登録申請をしてください。10月27日(金)17時以降に登録申請いただいた場合、11月7日までの公開が出来かねますので予めご了承ください。

「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト
パートナーシップ構築宣言のポータルサイトイメージ

おすすめNo.3 賃上げ加点に取り組む

事業計画期間(補助事業完了年度の翌年度以降)における「給与支給総額」と「事業場内最低賃金」を、それぞれ(ア)もしくは(イ)の計画とし、誓約書を提出することで加点されます。新事業で新たに従業員を雇い入れる場合や持続的な賃上げが見込める場合は、取り組みやすい加点項目です。

(ア)

  • 給与支給総額:年率平均2%あるいは3%以上増加
  • 事業場内最低賃金:毎年3月、地域別最低賃金より+60円もしくは+90円以上の水準とする

(イ)

  • 給与支給総額:年率平均6%以上増加
  • 事業場内最低賃金:以下両方を満たす
    ‐毎年3月、地域別最低賃金より+30円の水準とする
    ‐毎年+45円以上ずつ増加(初回は応募時点を起点とする)

(イ)は<大幅賃上げに係る補助上限引上の特例>ですので、加点に加えて、補助上限額の引き上げを受けることができます。上限額の引き上げ額は従業員数によって異なり、従業員5人以下の場合は100万円、6人~20人の場合は250万円、21人以上の場合は1,000万円です。ただし、目標未達成の場合の返還規程があるためご注意ください。



以上、ものづくり補助金の加点項目の中で取り組みやすい項目3選をご紹介しました。

ここからは、おすすめ3選以外の加点項目を一通りご紹介します。これからご紹介する加点項目は、条件にあてはまれば加点されるもの(コントール不可なもの)やスケジュールや工数、難易度の観点から比較的困難と判断したものです。補助金に関係なく取得しているものもあるかもしれませんのんで、さっと見て、あてはまるものがないか確認されるとよいでしょう。

なお、通常枠では、最大6項目の加点が可能です。

その他の加点項目

経営革新計画の承認を受けること

経営革新計画とは、中小企業が新事業に取り組む際に事業計画を策定し、行政の承認を受ける計画です。日本政策金融公庫の融資では特別利率が適用されるなど、保証・融資の優遇措置があります。融資面でのメリットも大きいことから、しっかりと作り込まれた事業計画でないと承認を得られません。そのため、書類作成の負担は大きいと言えるでしょう。

加点を受けるには、ものづくり補助金の申請時に、承認済みで計画期間内の経営革新計画を添付します。承認は月に一度しか行われないため、取り組む際は数か月をみておくことをおすすめします。

創業・第二創業後間もないこと(5年以内)

公募開始日より5年前の日から応募締切日までの間に創業・第二創業した事業者が対象です。創業および第二創業は下記の日付で判断します。

  • 創業:会社成立の年月日(個人事業主の場合は開業日)
  • 第二創業:代表取締役の就任日

個人事業主や組合については「第二創業」の加点はありません。個人の事業を承継する場合は、承継者の「創業」として申請します。

再生事業者であること

再生事業者は加点されます。

再生事業者の詳細は、ものづくり補助金総合サイト、参考欄の別紙4をご覧ください。

中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受け、応募申請時において以下のいずれかに該当していること。
(1) 再生計画等を「策定中」の者
(2) 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年7月29日以降)に再生計画等が成立等した者

ものづくり補助金総合サイト<別紙4>「再生事業者」の定義について

健康経営優良法人の認定を受けていること

令和4年度に健康経営優良法人に認定されている場合に加点されます。健康経営優良法人の認定要件を満たすことで認定を受けられます。

2022年実績では申請受付期間が8月から10月、認定発表が2023年3月ですので、ものづくり補助金の申請スケジュールにあわせて認定を受けるのは難しいでしょう。

技術情報管理認証制度の認証を受けていること

技術情報管理認証制度とは、情報セキュリティを高め、技術情報や顧客情報等の情報漏洩を防ぐ取組を認証する制度です。申請から認証を取得するまでにおおむね数か月、数十万円程度が必要とされています。

J-Startup、J-Startup 地域版の認定を受けていること

「J-Startup」は、実績あるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者等の外部有識者からの推薦に基づき、潜在力のある企業を選定し、政府機関と民間の「J-Startup Supporters」が集中支援を行うプログラムです。2023年4月には、J-Startup企業として新たに50社が選定されました。選定された業者はものづくり補助金の審査においても、加点を受けることができます。

被用者保険の適用拡大に先立ち、任意適用に取り組むこと

被用者保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大は段階的に行われており、現在、厚生年金被保険者が101人以上の企業は、フルタイム従業員もしくはフルタイムの4分の3以上勤務する従業員だけでなく、週20時間以上働くパートタイマーについても、健康保険・厚生年金保険に加入させなければなりません。

さらに、令和6年10月からは、厚生年金被保険者が51人以上の企業で働くパートタイマーも社会保険加入が義務化されることが決定しています。適用拡大に先立って任意適用に取り組む場合は加点されます。

えるぼし認定を受けていること

女性活躍推進法の「えるぼし認定」を受けていることで加点されます。従業員 100 人以下の場合は「女性の活躍推進企業データベース」に女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」を公表することで加点されます。

女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」とは、社内の現状を把握し従業員のニーズを探り、対策をA4用紙1枚にまとめるものです。従業員100人以下の場合は取り組みやすいでしょう。

くるみん認定を受けていること

次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けていることで加点されます。従業員 100 人以下の場合は「両立支援のひろば」に次世代法に基づく「一般事業主行動計画」を公表することで加点されます。

次世代法に基づく「一般事業主行動計画」とは、社内の現状を把握し従業員のニーズを探り、対策をA4用紙1枚にまとめるものです。女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」同様、従業員100人以下の場合は取り組みやすいでしょう。

また、両立支援助成金では必須のため、そちらに取り組んでいる場合は公表済みと考えられます。

減点項目

ものづくり補助金には加点項目だけでなく、減点項目もあります。下記に該当する場合は減点されます。

  • 応募締切日から過去3年間に、ものづくり補助金の交付決定を1回受けている場合
    ※過去3年間に、既に2回以上交付決定を受けた事業者は申請対象外
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠において、繰越欠損金によって課税所得が控除されることで申請要件を満たしている場合

ものづくり補助金の申請には専門家のサポートがおすすめ

通常枠の加点項目について解説しました。おすすめには、事業継続力強化計画、パートナーシップ宣言、賃上げを挙げましたが、従業員数100人以下の場合は一般事業主行動計画も取り組みやすい加点項目でしょう。締切までに余裕をもって取り組みたいですね。

採択を勝ち取るためには、審査項目および加点項目をおさえることが必須となります。採択に一歩でも近づくために、専門家の支援を利用することをおすすめします。当社はシステム開発案件も得意としています。まずは、無料の補助金相談をご利用ください。