ものづくり補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主が、働き方改革や被用者保険の拡大、賃上げ、インボイス導入等の制度変更に対応できるよう、生産性を向上させるための設備投資にかかる費用を補助する制度です。この記事ではものづくり補助金の概要や採択率を上げるポイントをわかりやすく解説します。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施しています。
令和5年度のものづくり補助金の予算は、令和4年度2次補正予算の中小企業生産性革命推進事業2,000億円の一部です。中小企業生産性革命推進事業は、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、事業承継・引継ぎ補助金の4つの補助金を対象としており、制度変更の状況や中小企業の取組み状況に応じて、柔軟に予算配分される予定です。年に複数回の締切があり、一年を通じて公募すると発表されています。
補助上限額
ものづくり補助金は取組内容に応じて申請する枠が分かれており、補助上限額や補助率は、申請企業の従業員人数や申請する枠に応じます。
- 補助上限額:750万円~1,250万円※通常枠の場合
- 補助率 :1/2(小規模事業者は2/3)
申請対象者
ものづくり補助金は、中小企業、小規模事業者、個人事業主を対象としています。中小企業の定義は中小企業等経営強化法にもとづき、資本金又は従業員数(常勤)が下表の数字以下となる会社又は個人が対象です。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(15次締切分)
そのほか、一定の要件を満たす各種組合や特定非営利活動法人、社会福祉法人なども申請可能です。
採択率
ものづくり補助金の採択率は回によって異なり、30%~50%程度で推移しています。
対象となる取り組みの例
ものづくり補助金の対象となる設備投資には、新商品・新サービスの開発や、新たな生産方式・提供方式の導入が挙げられます。
出典:ものづくり・商業・サービス補助金 公募要領概要版 15次締切分
対象となる経費
ものづくり補助金の対象となる経費は下記のとおりです。機械装置やシステム本体および設置にかかる費用、試作品の開発に必要な原材料費や知的財産権の取得にかかる費用などが対象です。ただし、土地や建物の取得・建設費用や人件費は対象外です。
- 機械装置・システム構築費
‐単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必須 - 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
‐ex) 特許権取得費用 - 外注費
‐ex) 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計、検査 - 専門家経費
- クラウドサービスの利用に関する経費
‐ex) サーバーの領域を借りる費用 - 原材料費
- (グローバル市場開拓枠のみ)海外旅費
- (グローバル市場開拓枠の一部のみ)通訳・翻訳費
- (グローバル市場開拓枠の一部のみ)広告宣伝費
応募時の必須条件
ものづくり補助金に応募する際は、事業計画書の作成が必須であり、事業計画は以下の3つの条件を必ず満たす必要があります。
- 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加すること
既存事業と新事業をあわせて、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費の合計)が年率平均3%以上増加する数値目標を立てます。 - 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること
給与支給総額とは、従業員と役員の給与や賞与の総額(福利厚生費、法定福利費、退職金は除く)です。算出根拠として、従業員のベースアップや新事業に伴う人員増強計画を盛り込みことができるでしょう。 - 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準とすること
事業計画期間において、毎年、事業場内の最低時給を地域別最低賃金+30円以上の水準に保ちます。
給与支給総額および事業場内最低賃金には、未達の場合の返還規程があります。必ず実行するようにしましょう。
ものづくり補助金の採択率を高めるポイント
ものづくり補助金の採択率は前述のとおり30%~50%程度で推移しています。事業計画書はA4サイズで10ページ以内の作成が推奨されています。事業計画書の作成や書類準備、電子申請にはかなりの手間がかかりますので、できるだけ採択率が高まるよう準備したいものです。
採択率を高めるための大きなポイントは二つです。
- ポイントをおさえた事業計画書を作成すること
- 加点項目を満たすこと
ポイントをおさえた事業計画書を作成すること
まず、ポイントをおさえた事業計画書作成の流れを解説します。事業計画にはストーリー性が重要ですので、下記のステップに沿って内容を整理し、全体の流れをイメージしたうえで審査項目をおさえるよう補強していくとよいでしょう。
事前整理
- 自社の強み、SWOT分析
- 現状 VS 理想の比較
- 理想を実現するうえでの課題は何か
- その課題をどうしたら解決できるか
- その解決方法(取組)にはどのような価格的・性能的な優位性があるか
- その取組にはどのような革新性があるか
資料準備
- 市場規模を示す統計データを準備する
- 顧客や利用者の声を集める
- 新商品開発、機械装置、システム等の具体的内容をまとめる
‐新商品(試作品)開発の具体的工程
‐導入する機械装置やソフトウェアの機能や仕様(パンフレット)
‐開発するシステムの具体的機能、イメージ図 - 必要に応じて発注先と連携し、スケジュールや工程表を作成する
- 実施体制を検討する
事業化計画
下記を念頭に取組みから3~5年の収益計画を作成します。
- 事業化の目標となる時期
- 提供価格とその算出根拠
- 売上規模(単価 × 数量)
- 収益計画
※必須条件(付加価値額、賃上げ要件)を満たすこと
ものづくり補助金の審査項目は大きく分けて3つの分類があります。事業計画書の全体の流れを記載できたら、各審査項目の観点で編集を加えます。なお、ものづくり補助金は革新性のある取組みを重視しているため、業界内で新しい取組みであったり、十分に広がっていない取組みであったりすることを述べられるといいでしょう。
技術面
- 取組内容の革新性
- 課題や目標の明確さ
- 課題の解決方法の優位性
- 技術的能力
事業化面
- 事業実施体制
- 市場ニーズの有無
- 事業化までのスケジュールの妥当性
- 事業の費用対効果
政策面
- 地域経済への波及効果
- ニッチトップとなる潜在性
- 事業連係性
- イノベーション性
- 事業環境の変化に対応する投資内容
加点項目を満たすこと
次に、加点項目です。加点項目は審査の際に有利になるため、できるだけ対応することをおすすめします。令和5年度の15次締切分では以下の加点項目が用意されています。
1. 成長性加点
経営革新計画の申請・承認を受けていると加点されます。経営革新計画とは、新商品の開発や新サービスの提供、新たな提供方法の導入など、企業が新たな取り組みをはじめた際に申請できる計画です。経営革新計画はものづくり補助金の事業計画書と重複する部分が多いため、計画内容はものづくり補助金の書類作成にも役立てられます。経営革新計画の作成から認定までには1か月以上かかるため、ゆとりを持って準備しましょう。
2. 政策加点
創業から5年以内の事業者やパートナーシップ構築宣言を行っている事業者等が対象です。パートナーシップ構築宣言は、業種や企業規模の大小に関わらず宣言できますので、対応しやすいでしょう。
3. 災害等加点
有効な期間の事業継続⼒強化計画の認定を取得していることが条件です。事業継続⼒強化計画とは、事業所の地震や水害等の被災リスクをあらかじめ調べたうえで、被災時の対策を事前に計画し、認定を受ける制度です。経営革新計画に比べると書類作成の負担も軽く、短期間で対応できます。
4. 賃上げ加点
補助金の必須要件を超える賃上げを行う際に加点される仕組みです。従業員数が多いほど賃上げにかかるコストが増大するため、従業員数の少ない会社や個人事業主ならば比較的対応しやすい加点項目です。
ものづくり補助金の活用をした設備投資を検討しよう
ものづくり補助金を活用することで、設備投資の負担を大きくおさえられます。これを機に新商品、新サービスの開発など、新たな取り組みを検討されてはいかがでしょうか。申請書の作成は相当な労力がかかるため、専門家に相談するのがおすすめです。当社はものづくり補助金の採択実績が多数あり、特にITツールやシステム開発系の案件を得意としています。ものづくり補助金の申請を検討する際はお気軽にご相談ください。