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2022年4月に改正される労務法によって義務化されるもの、緩和されるものなどがあります。特に、経営者をはじめ、人事や労務担当者がしっかりと把握しておくべきことも少なくありません。たとえば、パワハラや育児休業、有期労働者についてなどが挙げられます。そこで、この記事では労務法改正に伴ってどのような変更点があるのかについてお伝えします。

雇用保険料率の引き上げによる保険料の負担が増加

2022年4月の労務の法改正によって、雇用保険料率の引き上げが実施されることになりました。これは新型コロナウイルスの感染が拡大した問題によって、雇用調整助成金の支給額が膨らんでしまったことが原因です。現状の雇用保険料率は一般事業において賃金の0.9%を負担していますが、法改正後は4~9月が0.95%、10~2023年3月までが1.35%になることが決められています。引き上げされるタイミングは、2022年4月1日以降の最初の締め日によって支給日です。つまり、4月に締め日と支給日がある場合は4月の給与から、4月締め日で5月支給という場合は5月の給与からになります。

労災保険料率は現行のまま

労災の保険率については、令和3年に見直しのタイミングがきました。しかし、業種によって保険料率については各業種で幅広い違いがあります。そのため、変更をしてしまうとある業種は引き上げになり、ある業種では引き下げになるといった違いが出る可能性が高いです。そういった点を考慮した結果、令和4年においても労災保険料率は令和3年と変わらず、変更なしと決定しています。

パワハラ防止措置の義務化によって中小企業も違反企業名が公表へ

労働契約法の5条や民法上の安全配慮義務で規制がされていたパワハラに関する企業の責任ですが、明記されていなかったため、各企業に任せられている状態でした。しかし、労務法の改正では、パワハラ防止措置についても義務化されることになっています。大企業のパワハラ防止措置の義務化についてはすでに2020年6月1日から実施されており、違反した場合は企業名が公表されるというのがルールです。中小企業については、2022年4月1日から義務化されることが決定されているため、同じく企業名が公表されてしまいます。

義務化されることでやらなければならないのは「事業主の方針の明確化」「全従業員への周知や啓発」です。また、相談窓口の設置をしたうえであらかじめ自社の全従業員に周知し、相談窓口専用の担当者を決めたり、担当者のパワハラに関する知識や対応を深めたりと対応できる体制を整えておきましょう。もし実際にパワハラの相談があった場合は必ず事実確認後、被害者・加害者どちらに対してもプライバシーの保護をするとともに、被害者への配慮と加害者への措置をできるだけ早く行う義務があります。

一般事業主行動計画の策定義務などの対象が拡大へ

「女性活躍推進法」に基づいた一般事業主行動計画の策定・届出、自社の女性活躍に関する情報の公表が必要なのは、常に従業員が301人以上いる企業に限られていました。法改正後はこれが「101人以上301人未満」と変更されます。ちなみに、常時雇用している従業員とは、正社員以外にもパート、アルバイトなどを問いません。「雇用期間の定めがない状態で雇用されている人」「1年以上雇用されている人」です。女性やその家族については、育児休暇などについても変更されます。

育児休業などの個別周知義務化

雇用という点では育児休業などの個別周知が義務化、有期労働者の要件が緩和されるといった変更もあります。従業員やその配偶者が妊娠・出産した際には法令や自社の育児休業制度、育児休業給付、社会保険料免除などの説明、育児休業の取得が必要かどうかを従業員に個別に確認しなければなりません。

また、有期労働者の取得要件が緩和されます。改正前は有期労働者が育児休業などを取得するためには「継続雇用期間が1年以上」「子どもが1歳6カ月になるまでの間に契約満了することが明らかになっていない」という決まりでした。改正後は「1歳6カ月までに契約満了することが明らかになっていない」のみです。ただし、「育児休業の申請時に労働契約の更新がないと明確である」「会社が更新しないことを明示している」の2つの条件を満たしている必要があります。

労務法の改正前に自社の体制の見直しを

労務法の改正後にはさまざまな変更点がありますが、日本にある全企業が対象となるため、あらかじめ準備が必要です。たとえば、パワハラ防止に関する下準備は必須になりますし、育児休業についても確認と従業員全員に対して自社がどのような対応をしているのかなどについて伝えておかなければなりません。育児休業制度はパートやアルバイトなども条件を満たしていれば可能なので、雇用形態を問わず、全従業員が対象です。