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通勤時や業務中に事故に遭うなどして怪我をしたり、病気になったりする可能性はゼロではありません。建築業など体を動かす業種の場合は、デスクワーク以上に労災のリスクがあります。その補償となる制度が労災保険です。この記事では、従業員に労災が発生した際に行う、労災保険成立までの手続き方法を紹介します。万が一の場合に備えて、必要書類や届け出先などを把握しておきましょう。

労災保険とは?補償の種類を紹介!

労働保険はすべての労働者が加入対象となる保険で、事業主は労働者を1人でも雇っていれば成立手続きを行い、労働保険料を納めなければなりません。労働保険は労災保険と雇用保険の2つの制度で成り立っており、労災保険では労災によって死傷した人に給付を行っています。労災で亡くなった場合に発生するのが、遺族等給付です。遺族の人数などに応じて給付基礎日額の153日分~245日分の年金が受け取れる遺族等年金などが該当します。また、葬祭を行う際は31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額が葬祭給付として補償されます。

対象者が生きている場合の給付内容は、大きく分けて3種類です。1つは療養給付で、労災指定病院などで治療を受ける際の治療費が補償されます。2つ目は休業給付で、療養のため働けない期間の補償が受けられる制度です。補償金額は休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%相当が受け取れます。療養期間が1年6カ月以上になっても治っておらず、傷病等級第1級~第3級に該当する場合は、傷病等級に応じて給付基礎日額の313日分~245日分の傷病年金も給付されます。

傷病が治った後に障害が残った場合に対応しているのが、3つ目の障害給付です。障害等級第1級から第7級までに該当する場合は障害等級に応じて給付基礎日額の313日分~131日分の障害年金が、第8級から第14級までに該当する場合は給付基礎日額の503日分~56日分の障害一時金がそれぞれ給付されます。

労災保険の手続きに必要な書類を紹介!労災保険関係成立票の書き方も!

労災保険の手続きをする際は労働基準監督署に請求書を提出しますが、そのフォーマットは給付内容ごとに異なります。特に、療養給付の請求書である「療養補償給付たる療養の給付請求書」は様式5号と様式7号があり、労災保険対象者の多くがまず病院に行くことも相まって混同が多いです。以下、様式5号と様式7号の違いを例に、労災保険の手続きに必要な書類の書き方を紹介します。

様式5号と様式7号のどちらが必要になるかは、受診先および治療費の負担方法によって異なります。書類を用意してから労災指定病院に行き、医療機関の窓口に提出することで従業員の自己負担なしで治療を受ける場合に必要なのが様式5号です。対して様式7号は、労災指定病院以外の医療機関に行く場合や、従業員が一旦治療費を立て替えた場合に用います。いずれの書類も従業員本人が書いても構いませんが、事業主は証明欄を確認して労災の発生日時や状況の証明を行わなければなりません。雇用形態によっては代理人が証明するケースもあり、派遣社員の場合は派遣元の派遣会社が、出向労働者の場合は出向先の事業場が証明します。

建築業では工事現場全体で労災保険に加入している証として、労災保険関係成立票を看板にして掲げます。看板のサイズは縦25cm以上、横35cm以上で、道路など従業員以外の第三者でも見やすい場所に掲げなければなりません。建築業における保険関係成立年月日は工期の初日とするのが一般的です。

申請手続きの流れと書類届け出先

労災保険給付を受けるためには、まず労働基準監督署に請求書などを提出します。ほとんどの書類は所轄の労働基準監督署に提出しますが、様式5号は医療機関が所轄の労働基準監督署に提出するので、実質的に病院の窓口が提出先となります。申請手続きには期限があり、期限を過ぎると給付の請求権を失うため、早めに申請しましょう。申請内容によって起算日や期限の詳細は異なりますが、被災労働者が死亡した場合は5年以内、そうでない場合は2年以内がおおよその目安です。

労災申請が済むと、労働基準監督署によって調査が行われます。主に被災労働者や会社などへの聴き取りによって行われ、災害の発生状況や傷病の状態について問われます。労災発生時の時刻や現場責任者の名前および職名、受診した病院などの情報を会社で共有しておけばスムーズです。その後、所轄の労働基準監督署長によって判断が行われ、給付の可否が決まります。

労災保険の仕組みを把握して万が一に備えよう!

労災保険は労災が発生した際の心強い味方で、受診や休業などの場合に補償が受けられます。給付を受けるための請求書は内容によって異なり、特に受診時は受診先および治療費の負担方法によっても様式5号と様式7号に分かれるため、最低限この2つのフォーマットは把握しておくと早く対応できます。労災発生時の状況は労働基準監督署の調査でも訊かれるため、万が一の際も慌てずに状況を確認しましょう。