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失業しても安心して暮らせるよう、給付金の支給や再就職支援などを行う「雇用保険」。公的保険の一種であり、一定の条件を満たした企業や従業員は必ず加入する義務があります。とはいえ、どのようなケースに加入しなければならないのか、正確にはわかりづらいものです。今回は、企業・従業員別の雇用保険の加入条件や加入手続きの方法、2022年10月から始まる適用範囲拡大の内容などを解説していきます。

【企業・従業員別】雇用保険の加入条件

雇用保険は公的保険の一種であり、一定の条件を満たす企業や従業員は必ず加入しなければなりません。どのような場合に加入する義務があるのか、企業・従業員それぞれのケースで確認してみましょう。

企業が雇用保険に加入する条件

雇用保険は、失業などで労働者が収入を得られなくなった際に生活や再就職を支援するための制度です。このため、従業員を1人でも雇う場合、どのような規模・業種の企業でも必ず雇用保険に加入して保険料を納めなければなりません。仮に試用期間中だったとしても、給与が支払われていれば雇用していると見なされます。ただし個人経営の農林水産業の場合、常時雇用する従業員が5人未満であれば加入義務はなく、任意加入で構いません。

従業員が雇用保険に加入する条件

企業に雇用される従業員は、3つの条件を満たした場合に雇用形態にかかわらず雇用保険に加入しなければなりません。1つ目の加入条件は「31日以上雇用される見込みがある」ことで、期間の定めなく雇用される場合や、31日未満で雇止めになる旨が雇用契約書に明記されていない場合、実際に31日以上働いた実績がある場合などが該当します。2つ目は「週の所定労働時間が20時間以上ある」ことで、雇用契約書などに定められた労働時間で判断します。一時的に20時間以上働いた日があったとしても、契約上の労働時間が20時間未満なら加入対象にはなりません。3つ目は「学生ではない」ことで、定時制や通信課程などで学ぶ学生以外は雇用保険の対象外となります。

雇用保険の加入手続きと必要書類

雇用保険に企業や従業員が加入する場合、以下の3つのステップを踏むことになります。それぞれの加入手続きの内容と書類を紹介するので、順序だてて覚えておきましょう。

労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出する

新たに雇用保険に加入する企業の場合、まずは所轄の労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出します。保険関係成立届は、労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の適用対象となる企業が、従業員の労働保険への加入義務を果たすために必要となる書類です。企業と従業員の保険関係が成立した日から10日以内に提出する必要があるので、迅速に対応しましょう。なお、保険関係成立届の用紙は労働基準監督署やハローワークでもらうことができます。

保険関係成立届を提出したら、同時または後日に「概算保険料申告書」も提出しましょう。概算保険料申告書は、その年度にかかる労働保険の保険料をあらかじめ概算で申告・納付するためのもので、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局、日本銀行のいずれかへ提出します。保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に提出すればよいのですが、二度手間になるので保険関係成立届と同時に手続きを済ませるのがおすすめです。

STEP
1

ハローワークに「保険関係成立届の控え」と「雇用保険適用事業所設置届」を提出する

保険関係成立届を提出したら、次は所轄のハローワークへ「雇用保険適用事業所設置届」を提出します。従業員を雇って雇用保険の加入義務の対象になったことを知らせる書類で、これを提出しなければ従業員の雇用保険の加入手続きを行えません。設置の日の翌日から起算して10日以内が期限となっているので、忘れずに提出しましょう。なお、提出時には労働基準監督署の受付印がある保険関係成立届の控えを添付するほか、法人登記謄本や出勤簿や賃金台帳、労働者名簿などの提示も必要です。

STEP
2

ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する

雇用保険の加入対象となる従業員を雇ったら、雇用日または加入条件を満たした日の翌月10日までに、所轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しましょう。雇用保険適用事業所設置届を提出する際には、資格取得届も同時に提出します。すでに事業所設置届の提出が済んでいる場合は、加入対象となる従業員を新たに雇うたびに資格取得届の提出が必要です。手続きが終わると雇用保険の被保険者証と「資格取得等確認通知書」が交付されるので、従業員へ渡しましょう。

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2022年10月から始まる社会保険適用範囲の拡大とは?

近年の日本は少子高齢化や多様な働き方の普及など、労働環境が著しく変化しています。これに対応するべく、2022年10月よりパートやアルバイトなどの短時間労働者に対する社会保険の適用範囲が拡大されることになりました。雇用保険では週に20時間以上働き、31日以上の雇用が見込まれる場合は短時間労働者も加入対象ですが、健康保険や厚生年金保険などほかの社会保険は必ずしも加入対象とは限りません。「週の所定労働時間が20時間以上ある」「毎月の報酬が8万8000円以上ある」「1年以上継続雇用される見込みがある」「学生ではない」「501人以上の事業所である」という5つの条件を満たす場合、短時間労働者も社会保険の加入対象となっていました。

2022年10月の改正では、この5つの条件のうち2つが変更されます。「1年以上の継続雇用の見込みがある」が「継続して2カ月を超える雇用の見込みがある」へ、「501人以上の事業所である」が「101人以上の事業所である」へとそれぞれ拡大されるのです。事業所の人数については2024年の10月にも更なる改正が予定されており、将来的に51人以上の事業所から加入対象になります。これにより、従来は加入対象にならなかった多くの短時間労働者も社会保険へ加入できるようになるでしょう。

雇用保険への加入は義務!正しい手続きをしよう

一定の条件を満たした従業員を雇用保険へ加入させるのは、雇用保険法で定められた企業の義務です。加入義務を果たさない場合は違法行為となり、懲役6カ月以下または罰金30万円という罰則が科される恐れもあるため注意しなければなりません。2022年10月からは社会保険の適用範囲も拡大されるため、更なる対応が求められます。加入条件や必要な手続きなどを正しく理解し、法律にしたがって適正な対応を行いましょう。