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毎月の給料日に従業員に正確な額を支給する必要があるのが給与業務です。正社員・アルバイト・パートなどの従業員の立場に応じて手当てや保険料などに違いがありますし、行政への期限付きの書類提出も必要で、重要かつ非常に複雑な仕事といえるでしょう。しかし、年間スケジュールをしっかり押さえて流れをつかんでおけば、意外と簡単にこなせるものです。ここでは、給与計算の年間スケジュールについて解説します。

給与計算の毎月のスケジュール

年間スケジュールを把握する前に、まずは1カ月単位で仕事の流れをつかんでおきましょう。毎月の業務スケジュールは締日と給与支給日によって変わってきます。例えば、毎月15日が締め日、25日が給与支給日の会社の場合には、以下のようなスケジュールで給与業務を進めましょう。

1カ月単位での仕事の流れ

  • 15日(締め日)まで:給与の支払いに関する従業員の基本的な情報を整理。人事異動・昇給・降給、扶養家族の増減、氏名変更、振込先口座の変更など
  • 15〜17日頃:勤怠に関する情報集計(出勤・退勤、遅刻・早退・欠勤、休暇)、歩合給の算出など
  • 18〜20日頃:支給額と控除額を計算し、給与明細を作成
  • 21〜22日頃:金融機関で給与振り込みの手続き
  • 25日:給与支給
  • 月末:社会保険料の納付
  • 翌月10日:源泉所得税と住民税の納付

ただし、給与支給日前に土日祝日がある場合には、給与支給日が前倒しになり給与計算や確認業務に割ける日数が少なくなってしまいます。直前に慌てないよう、月初めにカレンダーをチェックして柔軟にスケジュールを組むようにしましょう。勤怠に関する情報は早めに回収して備えるのがコツです。ギリギリになってしまうと慌てて計算ミスを起こすリスクがあります。給与業務はミスの許されない業務なので、時間には常にゆとりを持って冷静沈着に行いましょう。締め日である15日と月末には保険料や税金に関する手続きがあります。

1カ月のスケジュールとしてはこのような流れですが、新入社員や退職者がいる場合は変則的に業務が生まれます。特に、新しい社員を給与計算システムに登録するときには細心の注意を払いましょう。もし基本情報に誤りがあると、その後の給与業務にも大きな問題が出てしまいます。

給与計算の年間スケジュール

次に、年間を通しての給与計算のスケジュールを把握しましょう。毎月の業務の流れは体で覚えていき、年間スケジュールでは期限の決まっている手続きから優先的に確認しておきましょう。では、年度初めより年間のスケジュールを解説します。

給与計算のスケジュール

3月〜4月:新入社員や異動社員の給与設定、健康保険料率と介護保険料率の変更を反映、雇用保険料率の改訂
5月:各市区町村の住民税一覧の通知をもとに住民税額を変更、4月入社の社員の社会保険料控除開始
6月:住民税の新年度控除額を登録、賞与支給(6月支給の場合)
7月:労働保険料の年度更新、源泉徴収所得税特例納付、算定基礎届の提出
8月:4月の昇給者を対象とした随時改定者の社会保険料改定
9月:厚生年金保険料率の変更、算定基礎届の結果に基づき標準報酬月額を更新
10月:7月に算定基礎届を提出した者の社会保険料改定
11月:年末調整準備(社員に必要書類を配布し案内、回収)
12月:年末調整実施、賞与支給(12月支給の場合)
1月:税務署に決定調書を提出、各市区町村に給与支払報告書の提出

3月の健康保険料率、介護保険料率の変更、9月の厚生年金保険料率の変更については、締め日や給与支給日を考えるとタイミングが難しいと感じるかもしれません。しかし、社会保険については締日や給与支給日は気にしなくても大丈夫です。3月分の保険料は4月の給与から控除、9月の厚生年金保険料は10月の給与から控除します。ただし、4月の雇用保険料率に関しては締め日の考慮が必要です。雇用保険は4月1日より翌3月31日までの間に支払い義務が具体的に確定した賃金に対し、その年度の保険料率を使用します。つまり、4月1日以降の最初の締め日によって確定する給与から新しい保険料率を適用します。

7月の算定基礎届とは、社会保険料の算出のための標準報酬月額を決定するために年金事務所または健康保険組合に提出する重要書類です。標準報酬月額の算出には算定基礎届を提出する7月より前の3カ月分(4〜6月)に支払われた報酬を元にします。報酬額が確定してから提出までの期間が非常に短いため注意しましょう。算定基礎届の対象になるのは7月1日の時点で健康保険・厚生年金保険の被保険者である従業員です。ただし、8月〜9月に昇給や降給によって基本給などの固定的賃金が変動した場合は、月額変動届の提出が必要となります。

9月には7月に提出した算定基礎届の結果に基づき、決定された標準報酬月額を適用し、10月から新しい社会保険料による控除を開始します。また、10月には最低賃金が改定されることがあるので、最低賃金ラインの従業員がいる場合には注意して見直しましょう。12月は年末調整があります。年末調整とは給与を支給する都度に源泉徴収した所得税の合計額と、その年中の給与の支給総額に対して納付するべき税額とを比較し、過不足額の精算を行う業務です。精算は12月あるいは1月に支給する給与で行います。

優先順位を確定し、慌てずに業務をこなしましょう

給与業務に慣れないうちは、多岐に渡る細かな業務量を見て全部終わるのかと不安になってしまうかもしれません。しかし、優先順位を決めて1つ1つを確実にこなしていけば、必ず正確に業務を完了することができるでしょう。スケジュールを立てるときには冷静になって、最初にやるべきことや準備しておくことを見極めることが大切です。