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第10回 事業再構築補助金の公募要領が発表されました。第10回の応募期間は、2023年3月30日(木)から2023年6月30日(金)18:00までです。

第10回公募は、新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少支援に加え、将来的に市場規模が拡大すると見込まれる分野の事業構築を支援する内容となっています。

事業再構築補助金は新たな事業を行う際の経費の一部を補助する制度ですが、すべての新事業が対象となるわけではなく、対象となる事業は限定されています。本記事では対象となる事業のポイントについて解説します。

対象となる事業のポイント

対象となる事業の主なポイントは次の2つです。

  • 新たな事業が「事業再構築」の定義に該当するか
  • いずれかの「事業類型」に該当するか


事業再構築補助金を活用するには、ポイント①と②の両方を満たした事業計画を作成する必要があります。

【ポイント①】事業再構築の定義

事業再構築補助金の対象となる事業を定義しているのが「事業再構築指針」です。

「事業再構築」とは、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」又は「国内回帰」の5つを指し、事業再構築補助金を申請するためには、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関と策定することとなります。

例えば「新事業進出」、「事業転換」、「業種転換」では、過去に製造等をしたことがない分野に新たに取り組むことが条件となるなど、各類型に複数の条件が設けられています。

事業再構築の定義

出典:事業再構築指針の手引き(3.0版)

【ポイント②】事業類型

事業類型ごとに要件が大きく異なるため、まずはどの事業類型に該当するかを確認した上で、要件に沿った事業計画を作成します。

第10回公募の各事業類型の対象となる事業者は「業況が厳しい事業者向け」、「業況が厳しい事業者向け以外」、「上乗せ枠」の大きく3つに分けられます。新型コロナウイルス感染症流行直後は売上高が減少していることが事業再構築補助金の大前提の要件でしたが、第10回公募で売上高の減少要件があるのは「業況が厳しい事業者向け」のみとなっています。

業況が厳しい事業者向け

「最低賃金枠」と「物価高騰対策・回復再生応援枠」は、2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が2019年から2021年の同3か月の合計売上高に比べて10%以上減少していることが基本要件です。

最低賃金枠

最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な事業者
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物価高騰対策・回復再生応援枠

業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者、原油価格・物価高騰等の影響を受ける事業者
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業況が厳しい事業者向け以外

「業況が厳しい事業者向け以外」の4つの事業類型は、業況が厳しい事業者向けと異なり、売上高が減少していなくても申請できる事業類型です。

成長枠

成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者
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グリーン成長枠

研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者
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産業構造転換枠

国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者
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サプライチェーン強靱化枠

海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者

上乗せ枠

大規模賃金引上促進枠

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者
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卒業促進枠

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者
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(注)サプライチェーン強靭化枠は対象経費が異なるため、本記事ではサプライチェーン強靭化枠以外の事業類型について記載しています。

必須要件(共通)

事業再構築補助金では、すべての事業類型に共通して下記3つの必須要件を満たす必要があります。

① 「事業再構築」の定義に該当する事業であること

経済産業省の「事業再構築指針」に示す「事業再構築」の定義に該当する3~5年の事業計画書を作成します。

事業再構築の定義

  • 新市場進出(新分野展開、業態転換)
    - 新たな製品で新たな市場へ
  • 事業転換
    - 主な「事業」を転換
  • 業種転換
    - 主な「業種」を転換
  • 事業再編
    - 事業再編を通じて、上記3つのいずれかを行う
  • 国内回帰
    - 製造拠点を海外から国内へ

事業計画書について認定経営革新等支援機関の確認を受けること

事業計画書について認定経営革新等支援機関の確認を受けることが必須要件となっています。

なお、補助金額が3,000万円を超える案件は、併せて金融機関の確認を受ける必要があります。金融機関が認定経営革新等支援機関の場合は、金融機関の確認のみで申請可能です。

認定経営革新等支援機関とは

税理士や中小企業診断士、金融機関など、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を「認定経営革新等支援機関」として中小企業庁が認定する制度です。

付加価値額を向上させること

補助事業終了後3~5年で付加価値額または従業員一人当たり付加価値額の年率平均を3.0~5.0%以上増加させることが必要です。

何%以上増加させる必要があるかは事業類型ごとに異なりますので、条件を満たす事業計画を作成しましょう。

付加価値額とは

付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものです。成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する(申請者における)決算年度の付加価値額とされています。

事業類型ごとの補助上限と補助率

次に、第10回公募の事業類型ごとの補助上限と補助率を確認します。事業類型は大きく2つに分けられます。

業況が厳しい事業者向け

業況が厳しい事業者向けの事業類型である「最低賃金枠」と「物価高騰対策・回復再生応援枠」は、いずれも売上高が減少していることが要件です。中でも、「最低賃金枠」はすべての事業類型の中でも一番補助率が高く、加点措置により採択率が優遇されています

また、この2つ事業類型は事前着手届出の対象です。事前着手届出が受理された場合、公募前に新事業の経費を支出していたとしても、令和 4 年 12 月 2 日以降に購入契約(発注)等した経費は特例として補助金の対象経費に含めることができます。

類型補助上限補助率
最低賃金枠最大1,500万円3/4
物価高騰対策・回復再生応援枠最大3,000万円2/3(一部3/4)

業況が厳しい事業者向け以外

業況が厳しい事業者向け以外の事業類型は、すでに売上高が減少している事業者ではなく、今後厳しくなることが予想される事業者(産業構造転換枠)や、現在の事業の業況とは関係なく成長分野に取り組む事業者を支援する事業類型となっています。

なお、成長枠およびグリーン成長枠は、補助率が1/2とされていますが、大規模な賃上げ*を行う場合には補助率が1/2から2/3へ引き上げられます。

*大規模な賃上げとは、事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45 円、②給与支給総額+6%を達成することです。

類型補助上限補助率
産業構造転換枠最大7,000万円2/3
成長枠最大7,000万円1/2 (2/3
グリーン成長枠(エントリー)最大8,000万円
(中堅1億円)
グリーン成長枠(スタンダード)1億円
(中堅1.5億円)
サプライチェーン強靭化枠最大5億円1/2

上乗せ枠

なお、「成長枠」と「グリーン成長枠」は、「大規模賃金引上促進枠」または「卒業促進枠」を併用することにより、補助額上限を引き上げることができます。

  • 大規模賃金引上促進枠:上限を3,000万円上乗せ
  • 卒業促進枠(中小企業等からの卒業):上限を2倍へ引き上げ

新事業立ち上げの際は事業再構築補助金を検討しよう

事業再構築補助金の概要についてご紹介しました。基本的に、補助金は採択・交付決定後に支出した経費のみが補助の対象となるため、事業の構想段階から申請を検討しておく必要があります。新事業や新サービス立ち上げの際には、補助金の利用も視野に入れて検討を進めてはいかがでしょうか。当社は認定経営革新等支援機関として、事業再構築補助金の多数の採択実績があります。ご検討の際はお気軽にご相談ください。

(参考)"事業再構築補助金【サプライチェーン強靱化枠を除く】公募要領(第10回)".事業再構築補助金事務局.令和5年4月
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo.pdf