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産休や育児休業の取得は従業員の権利の1つです。取得の申出があれば、人事労務ではこれらの休業にあたり、必要な事務手続きなどを行わなければなりません。しかし、手続きの種類が複数あるため、複雑でよくわからないという方もいるかもしれません。本記事では、産休・育休の概要とともに、人事労務で必要な手続きや、手続きの際の注意点などを解説します。

産休の概要と人事労務で必要な手続き

まずは、産休の定義・内容など概要と、産休に関して人事労務で必要な手続きを見ていきましょう。

産休の定義と内容

産休とは、正式名称を「産前産後休業」と言います。母体の保護のため、法律で定められている休業制度です。産休は、雇用形態や勤続年数などに関わらず、出産を迎える女性であれば誰でも取得できます。

産前休業は出産予定日の6週間前から出産日まで、産後休業は出産後8週間まで取得可能です。産休いつからか割り出すためには出産予定日が必要なので、申出があったら必ず確認しましょう。なお、休業は本人の希望や医師の許可などがあれば期間を縮めることが可能です。具体的には産前休業は出産日まで働くことができ、一方産後休業は産後6週間取得すれば、8週間を待たずに復帰することができます。 

産休に関して人事労務で必要な手続き

産休を取得すると従業員から申請があった場合に、人事労務で行う主な手続きは「産前産後休業取得者申出書」「出産手当金」「出産育児一時金」に関するものです。

産前産後休業取得者申出書は日本年金機構に提出する書類です。この申出書を出すことにより、産休中は被保険者・事業主の社会保険料の支払いが免除されます(受給資格は継続されます)。免除される期間は産休開始月から、産休終了月の前月まで(産休終了日が月の末日の場合はその月まで)です。出産手当金は、いわゆる「産休手当」と呼ばれているものになります。産休を取った従業員は産休中の無給状態になるため、そのカバーを目的とした制度です。健康保険組合などから、給与の2/3に当たる手当金が支給されます。本人か事業主が健康保険組合などに書類を申請することで手続きが完了します。

出産育児一時金は、出産や育児にかかる費用を一部支援する目的で行われている制度です。健康保険組合などから、上限42万円で一時金が支払われます。この一時金については、自分で出産費用を立て替えた後、自分で事後申請する方法の他、直接支払と受取代理という2種類の方法もあります。直接支払、受取代理いずれの方法でも一時金が支払われるのは、出産時に利用する医療機関に対してです。出産費用が一時金の上限を下回らない場合は、特に人事労務で行う手続きはありません。ただし、受取代理を利用し、かつ出産費用が一時金を下回って差額の請求が必要になった場合は、事業主がその手続きを行います。この場合、出産費用の領収書や合意契約書を添付した書類の提出が必要です。

その他、出産した従業員が子どもを扶養する場合は、社会保険料に関し「被扶養者異動届」の提出手続きも必要になります。提出先は日本年金機構です。なお、住民税に関しては産休・育休に関わらず課税され、免除にはなりません。通常時は特別徴収として、事業主が従業員の給与から天引きし納付していますが、産休・育休中は納付方法を変更する必要があります。具体的には「事業主が立替払いして復職後従業員から徴収する」「休業取得前に給与から天引きし一括払いする」「普通徴収に切り替える」のいずれかになります。どのような納付方法にするか、人事労務と従業員で話し合っておく必要があるでしょう。

育休の概要と手続きの方法

それでは次に、育休の定義・内容など概要と、育休に関して人事労務で必要な手続きを見ていきましょう。

育休の定義と内容

育休とは、正式名称を「育児休業」と言います。子どもの養育を行わなければならない従業員が法律に基づき取得できる休業です。原則、子どもの1歳の誕生日までの期間を育休として取得できます。なお、取得は男女どちらでも可能です。

育休に関して人事労務で必要な手続き

育休を取得すると従業員から申請があった場合、人事労務で行う手続きは主に「育児休業給付金」「社会保険料の免除」です。

育児休業給付金は、育休中に国から定められた計算式に基づいた額の給付金を受け取れて、育休中の社会保険料も免除される制度のことです。「育児休業手当」とも呼ばれます。この給付金を従業員が受け取るためには、人事労務から管轄のハローワークへ「育児休業等取得者申出書」の提出が必要です。なお、この申出書は2ヶ月ごとに提出が必要で、かつ育休終了時にも提出しなければなりません。

また、育児休業給付金は受給要件があるため、始めにハローワークに受給資格があるか確認が必要です。書類を提出し受給資格があると確認がとれてから本申請になります。さらに、子どもが育休を取得する従業員の扶養に入る場合は、所得税に関し「扶養控除等移動申告書」を提出してもらう必要があります。この申告書は年末調整を行う際に必要なので、忘れず従業員に提出を求めてください。

産休・育休の手続きにおける注意点

最後に、産休・育休の手続きにおいて、注意しておきたいポイントを説明します。

産休・育休の届出は書面でもらう

産休や育休を取得する際、社内で従業員からの口頭の申出で済ませることがないようにしましょう。産休・育休を申し出るときは「産休・育休申出書」、復帰するときは「復職届」など社内の規定様式で従業員から書面を受け取り、残すことが大切です。書面なしで手続きを行ってしまうと、もし何らかのトラブルが発生したとき、根拠となる書類がなく、話が複雑になってしまう可能性があります。もしものトラブル回避のため、しっかり書面を求めましょう。また、産休・育休に関する申出書は社内手続きの中で上司なども経由するため、部署内での情報共有にもなります。

手続きは速やかに行う

産休・育休に関する人事労務の手続きは複数あり、それぞれ必要書類や提出先、手続きの流れなどが異なるため、煩雑化しやすくなります。処理漏れなどが発生しないよう、できる限り速やかに手続きを行うことが大切です。

例えば、産前産後休業取得者申出書や育児休業等取得者申出書など、社会保険料の免除にかかる手続きは、処理が漏れると保険料の未納が発生してしまいます。将来従業員がもらう年金額などにも関わるものなので、タイミングを逸せず間違いのない手続きが必要です。チェックリストなどを作成し、確認しながら処理を進めれば、手続きの状況が一目でわかるため抜け漏れ防止になります。

認識のすれ違いが起こらないようすり合わせを行う

産休・育休中に必要な手続きの中には、事業主と従業員どちらが行っても良いものもあります。もし、このような手続きをお互い相手が行うと思い込んでしまったら、結局誰も手続きをしないままになる可能性があります。認識のすれ違いを防ぐため、双方しっかりすり合わせを行いましょう。

休業中に従業員とすぐやり取りできる連絡先を確認しておく

休業前にどんなにしっかり準備しておいても、手続きの途中で「書類のこの部分が記載されていない」「この部分の記載が間違っている」など、従業員に確認が必要な事柄が発生する可能性があります。そのようなときのため、すぐに従業員とやり取りができる連絡先なども確認しておきましょう。

産休・育休制度の理解を深め漏れなく速やかに手続きを進めよう

産休・育休は従業員が安心して出産・育児を行えるよう支える大切な制度です。人事労務としても、従業員がしっかり休業し出産・育児に専念できるよう、抜かりなく手続きを進める必要があります。手続きの種類が多いので、チェックリストを作成する、速やかに処理するなど、抜け漏れがないよう工夫しましょう。ぜひこの記事を参考に、産休・育休制度や手続きの方法に関し理解を深めてください。