「この上司、なぜか合わない」
そのすれ違いの背景には、性格ではなく“内面的な前提の違い”が潜んでいるかもしれません。

職場で生じる多くの衝突や誤解は、行動そのものではなく、それを支える価値観や動機が共有されていないことに起因します。こうした“目に見えないズレ”を可視化し、組織内の信頼関係と協働を促進する実践的なアプローチとして、近年「エニアグラム」が注目を集めています。

本記事では、当方が提供する「エニアグラムを活用した組織開発プログラム」について、その目的・構成・導入ステップ・具体的な活用事例を詳しくご紹介します。

「心理的安全性」だけでは解決できない、組織の課題

近年、「心理的安全性」や「対話の文化」は多くの企業で重要視されています。しかし現場では、「何を話せばよいのかわからない」「対話しても関係性が深まらない」といった声が多く聞かれます。

その背景には、土台となる人間理解の不足があります。
どれだけ対話の機会を設けても、相手の価値観や動機を理解していなければ、すれ違いは繰り返されてしまいます。

そこで有効なのが、個人の行動パターンの奥にある「動機」や「反応のクセ」に焦点を当てたエニアグラムです。

エニアグラムとは?― 表面的な行動ではなく、“内面の動機”を捉える性格モデル ―

エニアグラムは、人間の性格を9つのタイプに分類し、それぞれのタイプが何を求め、どのような価値観に基づいて行動しているのかを明らかにします。

たとえば、同じ「真面目に見える行動」でも、

  • タイプ1は「正しくありたい」
  • タイプ6は「信頼されたい」
  • タイプ8は「強く信頼される存在でありたい」

といった異なる動機から生じていることがあります。
このように、“行動の奥にある動機”を読み解くことで、対人理解の質が格段に向上します。

組織におけるエニアグラムの活用価値

エニアグラムは、個人理解にとどまらず、組織の多層的な関係性に応用可能です。

「上司と部下」「チーム間」「職種ごとの違い」など、組織内のあらゆる関係性に応用が可能です。

  • 上司と部下の関係性改善
  • チームの相互理解と対話の活性化
  • 職種間・世代間の認識ギャップの解消

こうした変化は、業務効率や定着率、心理的安全性といった重要な指標に直結します。

他の診断ツールとの違い

MBTIやストレングスファインダーなどのツールが「適性」や「資質」に焦点を当てるのに対し、エニアグラムは「自己認識」「内面の変容」「他者との違いを前提とした協働」を支援するモデルです。

  • 自分自身との向き合いを深める
  • 他者の価値観や行動への理解が深まる
  • 多様性の中で成熟する組織文化が育つ

こうした成長の土台づくりに貢献します。

エニアグラム導入による主な効果

部下の理解が深まり、マネジメントの質が変わる

成果に直結するマネジメントの本質は、「部下一人ひとりの動機や価値観を理解し、それに即した関わりをすること」です。
エニアグラムを活用することで、部下のタイプ特性を踏まえたコミュニケーションが可能になります。

たとえば、

  • タイプ2:貢献実感があるとモチベーションが高まる
  • タイプ5:十分な思考時間がないとパフォーマンスが落ちる
  • タイプ8:納得感のない指示には強く反発する傾向がある

タイプに応じた「任せ方」「声かけ」「フィードバック」が実践できるようになることで、1on1の質が向上し、信頼関係が強化されます。その結果、部下の主体性や成果にも自然とつながっていきます。

② チームの対話が機能するようになる

会議やディスカッションで「意見を出し合う」だけでは、建設的な議論は生まれません。エニアグラムの理解をチームで共有していると、以下のような相互配慮が自然と生まれます。

  • タイプ9に発言を促す(遠慮しがちな傾向)
  • タイプ3の結論急ぎに歯止めをかける
  • タイプ6の慎重な意見に耳を傾ける

こうした性格特性を前提とした対話は、単なる気遣いではなく、チーム全体の思考を前に進めるための仕組みとして機能します。

③ 自己認識が深まり、リーダーシップの質が変わる

エニアグラムは「自己理解」に深くフォーカスするツールです。
自分の無意識の反応パターンや、行動の背後にある動機に気づくことで、リーダーとしての在り方にも変化が生まれます。

たとえば、

  • タイプ1:正しさを追求しすぎることで、周囲にプレッシャーを与えていた
  • タイプ3:成果への執着が、無意識にチームメンバーを置き去りにしていた
  • タイプ6:過剰な慎重さが、チームのスピード感を削いでいた

こうした“自分のクセ”を冷静に捉え直すことが、チームに安心感を与えるリーダーシップへの転換点になります。

④ 多様性を"概念"で終わらせない組織づくり

多様性という言葉が広く使われていますが、形だけの施策にとどまる組織も少なくありません。
エニアグラムは「性格の多様性」をベースにしており、違いを前提とした協働を促進します。

  • 「多様性=国籍や性別」ではなく、「価値観や動機の違い」への理解が深まる
  • タイプを共通言語とすることで、お互いの違いを尊重しやすくなる
  • 表面的でない“実質的なダイバーシティ”と“心理的安全性”の基盤を育てられる

このように、単なるスローガンではなく、組織文化の土壌として「多様性」が根づくサポートをします。

導入ステップのご案内

エニアグラムを単発研修で終わらせず、現場に定着させることを目的とした以下のプロセスでご支援しています。

ヒアリングと課題把握

現場の具体的な課題やご要望を丁寧にお伺いします。

STEP
1

導入研修(半日〜)

タイプの特徴と自己理解の促進を中心に、エニアグラムの基本構造を学びます。

STEP
2

応用研修(3回シリーズ)

現場でのマネジメントや対話に活かすスキルをケーススタディ形式で習得します。

STEP
3

効果測定とフィードバック

定性・定量の両側面から、研修の影響を確認します。

STEP
4

定着支援(オプション)

マネージャー向けの個別セッションやフォローアップ施策の設計・実施も可能です。

STEP
5

活用イメージのご紹介

実際のご相談内容やニーズから導かれた、エニアグラムの代表的な活用シーンをご紹介します。
現場のリアリティに根ざしたシナリオを通して、貴社での導入イメージを具体化する一助となれば幸いです。

管理職研修における活用

部下一人ひとりの“動機”や“価値観”を理解することで、1on1や日常の声かけが変化。信頼関係の強化と、マネジメントの質的向上につながります。

プロジェクトチームの対話改善

「慎重派 vs 積極派」といった意見のギャップを、タイプごとの行動背景から読み解くことで、合意形成がスムーズに。対話の質そのものが変わります。

離職率対策としての人事施策

若手社員の“見えにくいニーズ”を可視化することで、適切な関わりや配慮が可能に。面談の質を高め、日常的なエンゲージメント構築に寄与します。

エニアグラムの活用が効果的な場面

  • マネジメント研修:タイプ別の接し方を学び、指導・育成力を高める
  • チームビルディング:相互理解を深め、心理的安全性の高い関係性を育む
  • 新卒研修:早期からの自己理解と多様な働き方への適応を支援
  • 人事施策への応用:配属・育成・評価の判断軸としての活用も可能

組織によって課題はさまざまですが、共通しているのは「人の見方が変わると、関係性が変わり、行動が変わる」ということ。
その変化の起点に、エニアグラムはとても有効です。

エニアグラム導入によるKPI例

【定性的変化】

  • 信頼関係や対話の質の向上
  • 自己認識・他者理解の深化
  • 組織内のストレス軽減と雰囲気の変化

【定量的変化

  • 1on1満足度アンケート(安心感・納得感など)
  • 360度フィードバック(理解・信頼の評価)
  • 定着率や離職率の変化

FAQ|導入をご検討中の企業様へ

エニアグラム導入をご検討中の企業様から多く寄せられるご質問に、現場での実践経験をもとにお答えします。貴社での活用のイメージを具体化するご参考になれば幸いです。

エニアグラムは「性格診断」なのでしょうか?

いいえ、エニアグラムは単なる性格診断ではありません。
人の「無意識に重視している価値観」や「反応パターン」を体系的に理解するための心理的フレームワークです。
個々の内面的な動機に着目することで、行動の背景や強みを深く理解し、1on1やマネジメントの質向上につながります。

エニアグラムの導入は、業績向上にも関係しますか?

直接的に短期成果を保証するものではありませんが、中長期的には「成果を生む関係性や組織風土づくり」に大きく貢献します。
1on1やマネジメントの精度が上がることで、認識のズレや摩擦が減り、対話の質と頻度が向上。人材の自発性や定着率の向上にも寄与します。

全社員に受けさせる必要がありますか?

必須ではありません。多くの企業では、まずはマネージャー層やリーダー層からの導入を推奨しています。
マネジメント層が価値観や反応傾向を理解することで、伝え方や関わり方の精度が高まり、「人が育つ土壌」を組織内に広げていく起点になります。

タイプにこだわりすぎて、レッテル貼りになりませんか?

エニアグラムはあくまで「内省を深めるプロセス」に重きを置いた仕組みです。
タイプの特定自体を目的とせず、傾向を仮置きすることで「多様な見方」や「関わり方の選択肢」を増やすことが狙いです。
そのため、レッテル貼りにはつながらず、安心して導入いただけます。

心理的な内容に抵抗感を持つ社員がいるかもしれません。

ご安心ください。ビジネス現場での実践を前提に構成されており、自己開示の強要やプライベートな感情への踏み込みはありません。
「個人の違いを理解する共通言語」として活用されることで、多くの参加者が前向きに受け入れやすい内容になっています。

まとめ:関係性を深めることが、成果への最短ルート

業務効率や売上の向上には、まず「人と人との信頼関係」が不可欠です。
エニアグラムは、その信頼関係の土台を育てる“実践可能な仕組み”として、今後の組織づくりに大きな可能性をもたらします。

「人の違い」を受け入れ、「関係性の質」を高めること。
それは、組織の未来を支える最も確かな投資と言えるのではないでしょうか。

当研修は、「自分と相手の違い」に気づき、コミュニケーションの引き出しを増やすことを目的としています。短期的なスキルではなく、長期的に“人が育つ土壌”をつくることがゴールです。

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